脊髄損傷
センター南 横浜都筑法律事務所

脊髄損傷

脊髄損傷の後遺障害

手や足に麻痺の後遺症


交通事故で脊髄を損傷すると、手や足に麻痺の後遺症が残ることがあります。

中枢神経である脊髄が損傷すると、手や足の知覚が脳へ伝わらなくなり、また、脳からの命令が手や足に伝わらなくなるためです。

脊髄損傷の後遺障害等級や、麻痺の範囲と程度などについてご案内します。

脊髄損傷の後遺障害等級

交通事故による脊髄損傷の後遺障害は、介護を要する後遺障害の1、2級と、その他の後遺障害の3、5、7、9、12級に分類されています。

それら脊髄損傷の等級認定基準では、麻痺について「四肢麻痺」「対麻痺」など範囲による区分と、「高度」「中等度」「軽度」という程度による区分が用いられており、これら麻痺の範囲と程度については後述します。

脊髄損傷の後遺障害認定基準は以下のとおりです。


脊髄損傷による介護を要する後遺障害


脊髄損傷による介護を要する後遺障害は、自賠法施行令の別表第1が規定する「神経系統の機能又は精神に著しい障害」を残す後遺障害で、「常に介護を要するもの」(1級1号)と「随時介護を要するもの」(2級1号)があります。

認定基準は以下のとおりとされています。

1級1号
脊髄損傷による症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について常に他人の介護を要する状態であり、以下が該当するとされています。

  • 高度の四肢麻痺。
  • 高度の対麻痺。
  • 中等度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する。
  • 中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について常時介護を要する。

2級1号
脊髄損傷による症状のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について随時介護を要する状態であり、以下が該当するとされています。

  • 中等度の四肢麻痺。
  • 軽度の四肢麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する。
  • 中等度の対麻痺であって、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要する。

脊髄損傷によるその他の後遺障害


脊髄損傷によるその他の後遺障害は、自賠法施行令の別表第2が規定する、以下の類型があります。

神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し

  • 終身労務に服することができないもの(3級3号)
  • 特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの(5級2号)

神経系統の機能又は精神に障害を残し

  • 軽易な労務以外の労務に服することができないもの(7級4号)
  • 服することができる労務が相当な程度に制限されるもの(9級10号)

局部に頑固な神経症状を残すもの(12級13号)

認定基準は以下のとおりとされています。

3級3号
生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、脊髄損傷による症状のために労務に服することができない状態であり、以下が該当するとされています。

  • 軽度の四肢麻痺(2級1号の軽度の四肢麻痺を除く)。
  • 中等度の対麻痺(1級1号・2級1号の中等度の対麻痺を除く)。

5級2号
脊髄損傷による症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができない状態であり、以下が該当するとされています。

  • 軽度の対麻痺。
  • 一下肢の高度の単麻痺。

7級4号
脊髄損傷による症状のため、軽易な労務以外には服することができない状態であり、以下が該当するとされています。

  • 一下肢の中等度の単麻痺。

9級10号
通常の労務に服することはできるが、脊髄損傷による症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限される状態であり、以下が該当するとされています。

  • 一下肢の軽度の単麻痺。

12級13号
通常の労務に服することはできるが、脊髄損傷による症状のため、多少の障害を残す状態であり、以下が該当するとされています。

  • 運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残す。
  • 運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められる。

脊髄損傷による麻痺の範囲と程度

脊髄損傷の後遺障害等級認定における麻痺の範囲と程度による区分は以下のとおりです。


脊髄損傷による麻痺の範囲


四肢麻痺
 両手と両足

片麻痺
 片側の手と足

対麻痺
 両手または両足

単麻痺
 片手または片足


脊髄損傷による麻痺の程度


(以下で「基本動作」とは、上肢は物を持ち上げて移動させること、下肢は歩行や立位をいいます)

高度
 障害のある上肢または下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作ができない

中等度
 障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある上肢または下肢の基本動作にかなりの制限がある。

軽度
 障害のある上肢または下肢の運動性・支持性が多少失われており、障害のある上肢または下肢の基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれている

「脊椎」と「脊髄」について


脊髄が神経の束であるのに対し、脊髄を保護している「脊椎」は、椎骨という複数の骨が連なって形成されています。

その脊椎は、上から頚椎(頸椎)、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨に区分されていて、たとえば頚椎(頸椎)損傷は脊椎損傷の一種です。

脊椎損傷は骨の損傷であり、その中にある脊髄の損傷を伴うことも伴わないこともあります。

併発する症状

脊髄損傷により、麻痺とともに併発する症状として、循環障害(心拍出量の低下、徐脈、血圧低下)、呼吸障害、排尿排便障害などがあります。

神経系統の機能又は精神の後遺障害等級

脳や脊髄といった中枢神経の損傷による後遺障害は、末梢神経の障害と症状も含め総合的に評価して、「神経系統の機能又は精神の障害」という枠組みの後遺障害として等級認定することとされています。

「神経系統の機能又は精神の障害」の後遺障害等級は以下のとおりです。

神経系統
の機能
 又は
精神に
著しい
障害を残し
常に
介護を要する
要介護
1級1号
随時
介護を要する
要介護
2級1号
終身
労務に服することができない
3級3号
特に軽易な労務以外の
労務に服することができない
5級2号
障害を残し 軽易な労務以外の
労務に服することができない
7級4号
服することができる労務が
相当な程度に制限される
9級10号
局部に 頑固な神経症状を残す  12級13号
神経症状を残す 14級9号





の機能











常に介護を要する 要介護
1級
1号
随時介護を要する 要介護
2級
1号
終身
労務に服することが
できない
3級
3号
特に軽易な労務以外の
労務に服することが
できない
5級
2号




軽易な労務以外の
労務に服することが
できない
7級
4号
服することができる
労務が相当な程度に
制限される
9級
10号


頑固な神経症状を残す  12級
13号
神経症状を残す 14級
9号

ただし、障害が単一であって、「神経系統の機能又は精神の障害」のほかに等級がある場合には、その等級により認定することとされています(たとえば、脳損傷による視野障害、脊髄損傷による胸腹部臓器の障害など)。



このページの著者弁護士滝井聡の顔写真
このページの著者

 弁護士 滝井聡
  神奈川県弁護士会所属
    (登録番号32182)