傷害慰謝料
センター南 横浜都筑法律事務所

傷害慰謝料

慰謝料の自賠責基準と弁護士基準

傷害慰謝料について

(入通院慰謝料)


交通事故の慰謝料について、自賠責基準は最低限の保障をするものであり、任意保険基準は保険会社それぞれが設けている賠償基準の総称です。

そして、慰謝料の額は、弁護士基準が自賠責基準や任意保険基準に比べ最も高額になるのが通常です。

このページでは、傷害慰謝料(入通院慰謝料)についてご説明します。


なお、自賠責の支払限度額以下の範囲では過失割合によって異なる場合があり、この点は過失割合ページ下段「自賠責は過失7割未満なら全額」に記載しています。

自賠責基準・任意保険基準

まず、傷害慰謝料(入通院慰謝料)の自賠責基準と任意保険基準についてです。


自賠責基準の傷害慰謝料


傷害慰謝料の自賠責基準は、4300円に「通院・入院の実日数×2」か「治療期間」の少ない方を乗じて計算します(令和2年3月31日までに発生した事故については4200円に乗じます)。

たとえば、以下の通りです。

  • 通院の実日数46日(×2=92日)、治療期間90日の場合、

  4300円×90=38万7000円

  • 通院の実日数44日(×2=88日)、治療期間90日の場合、

  4300円×88=37万8400円

ただし、傷害に対する自賠責保険の賠償額は120万円が限度と定められており、この120万円は、治療関係費(診療費、通院費など)、休業損害、傷害慰謝料など傷害による損害の合計の限度額です。

このため、これら合計額が120万円を超えると、上記の計算方法による傷害慰謝料の全額は支払われないことになります。


任意保険基準の傷害慰謝料


任意保険会社は、傷害慰謝料について各会社ごとに基準を設定していて、実際の賠償提示では、自賠責基準と弁護士基準の間の金額が多く見受けられます。

傷害慰謝料について、任意保険会社からの提示では計算式が示されていないことが多くあります。

また、自賠責基準による計算のまま任意保険会社から提示されることもあります。

弁護士基準の傷害慰謝料

傷害慰謝料(入通院慰謝料)の弁護士基準は、日弁連交通事故相談センター東京支部の通称「赤い本」において、原則」(別表Ⅰ)と「むちうち症で他覚所見がない場合等」(別表Ⅱ)の2つに分類されています。

弁護士基準は他覚所見が重要


上記弁護士基準の2つの分類では、「原則」に比べ「むちうち症で他覚所見がない場合等」の方が低額に設定されていて、むちうち以外でも医師による他覚所見がなければ、その低額な基準を用いることが実務で定着しています。

このように、慰謝料額は他覚所見の有無で変わることになり、より高額な慰謝料が認められるためには、他覚所見の存在が重要になります。

(「他覚所見」とは、症状について医師の検査等で客観的に捉えることができる所見であり、特に画像が重要となります)


弁護士基準による傷害慰謝料の原則


弁護士基準による傷害慰謝料の「原則」(別表Ⅰ)は以下のとおりです。

  • 傷害慰謝料については、原則として入通院期間を基礎として別表Ⅰを使用する。
  • 通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。
  • 被害者が幼児を持つ母親であったり、仕事等の都合など被害者側の事情により特に入院期間を短縮したと認められる場合には、増額することがある。
  • なお、入院待機中の期間及びギプス固定中等安静を要する自宅療養期間は、入院期間とみることがある。
  • 傷害の部位、程度によっては、別表Ⅰの金額を20%~30%程度増額する。
  • 生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰返したときなどは、入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮する。

傷害慰謝料の別表Ⅰ

(入院・通院=月数、金額の単位=万円)

入院 0 1 2 3 4 5 6 7
通院   53 101 145 184 217 244 266
1 28 77 122 162 199 228 252 274
2 52 98 139 177 210 236 260 281
3 73 115 154 188 218 244 267 287
4 90 130 165 196 226 251 273 292
5 105 141 173 204 233 257 278 296
6 116 149 181 211 239 262 282 300
7 124 157 188 217 244 266 286 304
8 132 164 194 222 248 270 290 306
9 139 170 199 226 252 274 292 308
10 145 175 203 230 256 276 294 310
11 150 179 207 234 258 278 296 312
12 154 183 211 236 260 280 298 314
13 158 187 213 238 262 282 300 316
14 162 189 215 240 264 284 302  
15 164 191 217 242 266 286    

〔表の見方〕

入院のみの場合は入院期間に該当する額。

通院のみの場合は通院期間に該当する額。

入院後に通院があった場合は、該当する月数が交差するところの額。
例えば別表Ⅰで入院1か月、通院10か月の場合は傷害慰謝料175万円。

※この表を超える期間についても慰謝料額の設定はあります。


むちうち症で他覚所見がない場合等


弁護士基準による「むちうち症で他覚所見がない場合等」(別表Ⅱ)の傷害慰謝料は以下のとおりです。
(「等」は軽い打撲・軽い挫創(傷)の場合を意味します) 

  • 入通院期間を基礎として別表Ⅱを使用。
  • 通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。 

傷害慰謝料の別表Ⅱ

(入院・通院=月数、金額の単位=万円)

入院 0 1 2 3 4 5 6 7
通院   35 66 92 116 135 152 165
1 19 52 83 106 128 145 160 171
2 36 69 97 118 138 153 166 177
3 53 83 109 128 146 159 172 181
4 67 95 119 136 152 165 176 185
5 79 105 127 142 158 169 180 187
6 89 113 133 148 162 173 182 188
7 97 119 139 152 166 175 183 189
8 103 125 143 156 168 176 184 190
9 109 129 147 158 169 177 185 191
10 113 133 149 159 170 178 186 192
11 117 135 150 160 171 179 187 193
12 119 136 151 161 172 180 188 194
13 120 137 152 162 173 181 189 195
14 121 138 153 163 174 182 190  
15 122 139 154 164 175 183    

※この表を超える期間についても慰謝料額の設定はあります。


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このページの著者

 弁護士 滝井聡
  神奈川県弁護士会所属
    (登録番号32182)