調停が加害者から申し立てられる場合
交通事故の調停とは
交通事故の調停とは、裁判所で、当事者同士が裁判所の調停委員を介して損害賠償について話し合いをする手続です。
話し合いという点では示談交渉と同じですが、その場所が裁判所となり、示談交渉と裁判の中間的な手続になります。
この調停は、被害者と加害者のいずれからも申し立てることができ、損害賠償請求をされている人がその全てを否定して申し立てることもできます。
ここでは、調停が、加害者から、加害の事実や賠償の一部を認めて申し立てられる場合についてご説明します。
加害者からの調停申立て
交通事故の調停は、加害者から申し立てる場合の多くは、保険会社や弁護士の意向で、弁護士が代理人となって、被害者の居住地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。
その内容は、加害者側で考え自認する賠償額に確定することを求め、その理由として、個々の損害項目について賠償額を算定する主張になっています。
加害者側から調停を申し立てるのは、裁判所を利用せずに示談交渉をしていても進展しないという見通しがあるなどして、早く案件を進めたいという思惑からになります。
その念頭には、調停で解決できないときは債務不存在確認訴訟へ移行しようという考えがあるのが通常です。
調停の進行
交通事故の調停は、損害賠償額について、当事者双方が必要と考える範囲で主張書面や証拠を提出し、期日に口頭による主張も出し合って進行していきます。
加害者側から調停申立てがあった場合でも、被害者から反論として自己の考える損害賠償額を主張することは可能です。
話し合いは、基本的には当事者双方が入れ替わる方法で調停委員を介して進みますが、状況によっては双方同席して話し合うこともあります。
そして、一定の主張や証拠が出たところで、調停委員会(裁判官と調停委員とで構成)から解決に向けた助言や斡旋がされます。
調停の終了
交通事故調停の終了方法としては、調停成立(民事調停法16条)、裁判所が判断を出す調停に代わる決定(同法17条)と、調停不成立(同法14条)があります。
調停の成立による解決
損害賠償について当事者間で合意が成立して、裁判所の調書に記載されると、調停成立による解決となります。
その調書記載には裁判上の和解と同一の効力が生じ(民事調停法16条)、それにより、確定判決と同一の効力が生じます(民事訴訟法267条)。
調停に代わる決定による解決
調停成立の見込みがない場合、裁判所は、相当と認めるとき、職権で、解決のために必要な決定をすることができます(民事調停法17条)。
これを調停に代わる決定といいます。
この調停に代わる決定が出され、異議の申立てがない場合も解決となり、その決定に裁判上の和解と同一の効力が生じ(民事調停法18条5項)、それにより、確定判決と同一の効力が生じます(民事訴訟法267条)。
調停解決による確定判決と同一の効力
以上のとおり、調停成立や、調停に代わる決定に異議申立てがない場合、それらによる解決内容について確定判決と同一の効力が生じます。
確定判決と同一の効力ということは、解決内容のとおりに損害賠償が加害者からされない場合に、被害者から強制執行をする根拠になるということです。
調停で解決しない場合
調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合において、裁判所が調停に代わる決定をしないときは、調停不成立として終了させることができます(民事調停法14条)。
また、調停に代わる決定に対する異議が申し立てられたときは、その決定は効力を失います(民事調停法18条1項・4項)。
これらの場合、損害賠償の争いが解決しないまま調停は終了となります。
加害者からの訴訟
交通事故の損害賠償について調停で解決しない場合、加害者側から講じる次の手続としては、債務不存在確認訴訟があり、以下のページで解説しています。
債務不存在確認訴訟
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このページの著者
弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)