一時停止したかどうか
再度停止などして安全確認が必要
交差点での出合い頭の交通事故でよく問題となる、一時停止規制のある側が「一時停止したかどうか」について、法律、裁判例や、過失割合認定基準をご案内します。
停止線や交差点の直前で一時停止したあと、見通しが悪いときは、見通しの良い場所で再度停止などして交差道路への安全確認をする必要があるとされています。
(なお、バイクと車の事故・自転車と車の事故の右折関連では異なる観点があり、各認定基準のページをご参照お願いします)
一時停止に関する法律の規定
一時停止に関し、道路交通法は以下のとおり規定しています。
道路交通法43条
(指定場所における一時停止)
車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあっては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第36条第2項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
一時停止だけでは足りない
上記のとおり道路交通法43条は、前段で「一時停止しなければならない」とするのに加え、後段で「交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない」と規定しています。
単に停止線や交差点の直前で一時停止するだけでは足りないわけで、このことについて次に述べる裁判例も言及しています。
なお、上記道路交通法43条の後段が「第36条第2項の規定に該当する場合のほか」とするのは、交差道路が優先道路又は明らかに広い道路の場合、その車両に対する進行妨害を規制する同法36条2項が適用されるという意味です。
一時停止に関する裁判例
信号機がなく見通しの悪い交差点における出合い頭事故の裁判例をご紹介します。
東京高裁・昭和54年12月18日判決
交差道路の歩道を右から進行してきた自転車と衝突した、一時停止規制のある自動車の運転者に対する刑事裁判の判決です。
裁判所は、標識及び停止線の標示に従った一時停止のあと、交差点内の見通し可能な地点で再度一時停止して、交差道路に十分な注意を払うべきだったと判示しています。
その理由としては、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならず(道路交通法43条)、さらに、進路前方左右、特に右方の安全を確認して危険を及ぼすことのないよう十分な配慮をする注意義務をも負うことは多言を要しないとしています。
ただし、安全確認の方法として、裁判所は、一時停止後に下車して交通状況を観察する、同乗者に下車させて誘導させる、適当な通行人に誘導を依頼するなど、さまざまな臨機の措置がありうるとも述べています。
再度停止したかどうかが重要
上記の裁判例のとおり、一時停止規制を受ける側が交差道路への安全確認をする方法は複数考えられます。
民事上の交通事故裁判の判決でも、安全確認の方法として「再度一時停止するなど」といった表現が見受けられます。
とはいえ、警察の実況見分調書から民事上の過失割合を検討するうえで、やはり再度停止したかどうかが重要になっています。
一時停止後進入の過失割合認定基準
過失割合の認定基準において、一時停止規制を受ける側が「一時停止後進入」をすれば基本過失割合から修正されますが、これも一旦停止位置で停止すれば直ちに適用されるわけではありません。
一時停止をし、左右を見て交差道路を進行する車両の接近を認めたけれど、その速度と距離の判断を誤って、低速度で交差点に進入し、減速しなかった相手車両と衝突したという事故態様が想定されています(別冊判例タイムズ38号)。
「一時停止後進入」が修正要素となる過失割合認定基準を、以下のページに掲載しています。
修正要素となる過失割合認定基準
「一時停止後進入」が修正要素となる過失割合認定基準を、以下のページに掲載しています。
このページの著者
弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)