休業損害

休業損害

センター南 横浜都筑法律事務所

賃金センサスによる休業損害の計算

主婦の休業損害計算などで使用


賃金センサスとは、政府が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめた、労働者の平均賃金の統計です。

交通事故の損害賠償では、主婦(家事従事者)の休業損害などの計算で使用されます。

賃金センサスは、雇用形態、職種、性別、学歴、年齢など様々な分類による平均賃金の統計があり、エクセル表としてインターネット上で公表されています(以下のサイト内)。
   e-Stat           
政府統計の総合窓口     
  |賃金構造基本統計調査 


賃金センサスを基礎収入の資料に


休業損害の一般的な計算式は、以下のとおりです。

基礎収入(日額)
× 症状固定までの休業日数

このうち基礎収入については、主婦の家事の場合、会社員のような「休業損害証明書」「源泉徴収票」などがないので、資料をほかに求めることになります。

そこで、賃金センサスを基礎収入の資料とし、休業損害の計算に活用します。

収入資料に疑義ある場合も賃金センサスで


また、収入の資料がある人でもその資料を用いることに疑義がある場合や、学生の就職遅延による休業損害を認める場合などにも、賃金センサスを使うことがあります。


賃金センサスの集計から日額を算出


賃金センサスを基に、平成30年~令和4年の男女、男性、女性それぞれについて、学歴計・全年齢の平均賃金を集計すると以下のとおりです。

  男女計
学歴計
全年齢
平均
男性
学歴計
全年齢
平均
女性
学歴計
全年齢
平均
  千円 千円 千円
H30 4,972.0 5,584.5 3,826.3
R1 5,006.9 5,609.7 3,880.1
R2 4,872.9 5,459.5 3,819.2
R3 4,893.1 5,464.2 3,859.4
R4 4,965.7 5,549.1 3,943.5

主婦(家事従事者)の休業損害計算において、女性の平均賃金から学歴・年齢を問わずに算出する場合、上記の集計から、例えば、
令和3年の賃金センサスによる日額は、
3,859,400円÷365日=10,573円となります(円未満を切り捨てています)。

労働制約の程度を考慮


ただし、日額を算出しても、そこへ日数を乗ずる計算によって休業損害の額になるとは限らず、労働への制約の程度を考慮する必要があります。

すなわち、時期によって労働が制約された割合を乗じ、さらに労働が制約された日数を乗じて休業損害を計算します。

症状固定までの全ての日に何もできなかったと認められる重度の傷害の場合は、全ての日を制約100%とする計算になります。

労働制約・日額減縮・統計選択などで争い


休業損害の計算では、上記のとおり労働への制約を考慮する必要があり、事情によっては事故とは別の観点による日額の減縮もありえます。

また、賃金センサスは、男女計・男性・女性それぞれについて、学歴ごとの統計や年齢ごとの統計もあり、どの統計を選択するかは事情により様々です。

これらについて、被害者・加害者間で争いになることがあります。


政府サイトの賃金センサスから算出


賃金センサスは、政府のウエブサイトである以下のページに掲載されています。
   e-Stat           
政府統計の総合窓口     
  |賃金構造基本統計調査 

賃金センサスを開く


例えば令和3年の賃金センサスを使う場合、上記のページの中で、
「■令和3年賃金構造基本統計調査」の下、
「一般労働者」の下の、
「産業大分類」をクリックすると、以下のページが開きます。
   e-Stat           
政府統計の総合窓口     
  |データセット一覧   

この中で、「表番号」1番
「学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
「EXCEL閲覧用」という緑色のボタンをクリックします。

すると、
「第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
という題名のエクセル表が開きます。

賃金センサスの中の使用箇所へ


そのエクセル表の左端を見ながら下のほうへスクロールすると、以下の欄が現れます。


学歴計

その右のほうにある、以下の箇所を使います。

    企業規模計(10人以上)
   きまって
支給す
る現金
給与額
  年間賞与
その他特
別給与額 
所定内
給与額 
  千円  千円  千円 

学歴計

270.2 

253.6 

617.0 

(この左や右にも欄がありますが、それらは使いません)

日額を計算


「きまって支給する現金給与額」は平均月額、「年間賞与その他特別給与額」は平均年額になっていて、単位は「千円」なので、以下の計算で日額が算出されます(円未満を切り捨てています)。
 (270.2×12+617.0)×1,000
 ÷365日=10,573円

ただし、ここへ労働制約の割合や日数を考慮し、事情によっては事故とは別の観点による日額の減縮もありえることや、どの統計を選択するかは事情により様々であることは、上で述べたとおりです。

男性や性別不問の場合


男性の統計を使う場合は、上記のエクセル「第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」の中にある、


学歴計

という欄の中で、上で女性について掲載した「企業規模計(10人以上)」の表に相当する箇所を使います。
 
性別不問の場合、同エクセルの上のほうにある、

男女計
学歴計

という欄になります。

学歴や年齢を考慮の場合


賃金センサスには、学歴別に区分した欄もあるので、学歴を考慮する場合は、それらの中で上記に相当する箇所を使います。

また、各学歴ごとに、年齢層別の欄もあり、年齢を考慮する場合は、それらの中で上記に相当する箇所を使います。


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このページの著者

 弁護士 滝井聡
  神奈川県弁護士会所属
    (登録番号32182)