ボーナスの休業損害
賞与減額証明書によって請求
交通事故で怪我をして仕事を休むと、勤務先からボーナス(賞与)を減額されてしまうことがあります。
収入が減るのですから、休業損害として加害者に賠償請求したいところですが、休業損害証明書にボーナスを記載する箇所はありません。
ボーナスの減額については、「賞与減額証明書」を勤務先に書いてもらうことによって、休業損害として賠償請求することになります。
賞与減額証明書の内容
賞与減額証明書の内容としては、被害者の職種・役職、氏名、採用日を記入する枠と、欠勤・賞与減額の原因となった事故の発生年月日を記入する欄があり、その下に、以下各事項の記入欄があります。
1.賞与支給年月日
年度・期も記入。
2.賞与支給対象期間
日数も記入。
3.欠勤期間
日数も記入。
4.平常に勤務していた場合の支給金額・支給計算式
以下を記入。
支 給 額 ① 円
支給計算式
5.欠勤により減額した額・減額計算式
以下を記入。
減額した額 ② 円
減額計算式
6.差引支給額
4項①と5項②の差額を記入。
(①-②) 円
7.賞与減額の根拠
以下から選択し写しを添付。
- 就業規則
- 賞与減額規定
- 労働組合との協定書等
- その他( )
さらにその下に、勤務先の名称、代表者名、捺印などの欄があります。
ボーナス減額は被害者自身で注意を
ボーナスの休業損害については、加害者側の保険会社から話題にしてくることは少なく、被害者ご自身で事故の影響によるボーナスの減額がないか注意をする必要があります。
また、示談交渉までの間にボーナスの支給時期が到来するとは限らず、支給時期が来て減額があっても、事故の影響の有無や程度が明確になっているとは限りません。
事故による減額があれば勤務先に賞与減額証明書を書いてもらうことになるのですから、まずは勤務先と相談なさることをおすすめします。
支給基準や減額の計算・資料を適切に
ボーナスが減額されたことによる休業損害を請求するうえでは、本来の支給基準や、減額の計算・根拠資料を適切に示す必要があります。
それは、賞与減額証明書における、平常に勤務しいていた場合の支給額・支給計算式(4項)、減額計算式(5項)、減額の根拠(7項)と、その根拠資料である就業規則や賞与減額規定などです。
また、それらについて、休業損害証明書や源泉徴収票など他の資料との間に齟齬がないことも重要です。
それらの問題点を指摘した裁判例を以下ご紹介します。
東京地裁・平成21年11月25日判決
賞与減額証明書について、減額の根拠(就業規則など)が示されておらず、減額の算定根拠も不明であり、賞与の支給基準とする記載が休業損害証明書とも源泉徴収票とも齟齬しているとして、到底採用できるものではないと判示。
東京地裁・平成29年5月31日判決
賞与の減額分について、15日間欠勤として調整計算されたうち4日間は法定の休日であること、賞与額及びその減額の算定方法が証拠上判然としないことをも勘案して、事故と相当因果関係のある損害を15分の11と認定。
名古屋地裁・令和2年2月12日判決
支給されなかった賞与の額について、支給基準が明らかではないため全額を休業損害と認めるのは相当ではないとして、休業の程度等に照らして、対象期間中の時期ごとに段階的に低減させた休業損害を認定。
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このページの著者
弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)