後遺障害
センター南 横浜都筑法律事務所

後遺障害

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは


高次脳機能障害とは、脳の高次機能に生じた障害です。

脳の高次機能とは、目・耳・鼻・口・皮膚などから伝えられた感覚情報に対する、知覚・記憶・学習・思考・判断などの認知機能と、感情を含めた精神機能をいいます。
それら機能の障害が、高次脳機能障害です。

高次脳機能障害が生じる原因としては、頭部外傷、血管障害、変性疾患、代謝疾患、感染症などがあります。

交通事故による高次脳機能障害と、その後遺障害等級について、ご説明します。


交通事故による高次脳機能障害


交通事故による高次脳機能障害は、脳が損傷を受け、意識障害が一定期間継続した後に、以下のような認知障害や行動障害、人格変化が認められ、社会復帰が困難となる後遺障害です。

認知障害


記憶・記銘力障害、注意・集中力障害、遂行機能障害など
具体的には、新しいことを覚えられない、気が散りやすい、行動を計画して実行することができないなど。

行動障害


周囲の状況に合わせた適切な行動ができない、複数のことを同時に処理することができない、職場や社会のマナーやルールを守れない、話が回りくどく要点を相手に伝えることができない、行動を抑制できない、危険を予測・察知して回避的行動をすることができないなど。

人格変化


受傷前には見られなかったような発動性低下と抑制低下。
具体的には、自発性低下、気力の低下、衝動性、易怒性、自己中心性など


高次脳機能障害の後遺障害等級


高次脳機能障害の後遺障害等級は、1、2、3、5、7、9級に区分されています。

それら等級ごとに、自賠責保険で後遺障害認定をする際、以下のような基準によるとされています。

等級認定基準


(以下のうち1級1号・2級1号は自賠法施行令の別表第1「介護を要する後遺障害」に分類されます)

1級1号
 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要する

2級1号
 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。
 身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができない

3級3号
 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。
 しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人間関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難。

5級2号
 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。
ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。
 このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができない。

7級4号
 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができない。

9級10号
 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題がある。


神経系統の機能又は精神の後遺障害等級


脳や脊髄といった中枢神経の損傷による後遺障害は、末梢神経の障害と症状も含め総合的に評価して、「神経系統の機能又は精神の障害」という枠組みの後遺障害として等級認定することとされています。

以下のとおりであり、高次脳機能障害も、上で述べた後遺障害等級ごとにこの中に入ります。

神経系統
の機能
 又は
精神に
著しい
障害を残し
常に
介護を要する
要介護
1級1号
随時
介護を要する
要介護
2級1号
終身
労務に服することができない
3級3号
特に軽易な労務以外の
労務に服することができない
5級2号
障害を残し 軽易な労務以外の
労務に服することができない
7級4号
服することができる労務が
相当な程度に制限される
9級10号
局部に 頑固な神経症状を残す  12級13号
神経症状を残す 14級9号





の機能











常に介護を要する 要介護
1級
1号
随時介護を要する 要介護
2級
1号
終身
労務に服することが
できない
3級
3号
特に軽易な労務以外の
労務に服することが
できない
5級
2号




軽易な労務以外の
労務に服することが
できない
7級
4号
服することができる
労務が相当な程度に
制限される
9級
10号


頑固な神経症状を残す  12級
13号
神経症状を残す 14級
9号

ただし、障害が単一であって、「神経系統の機能又は精神の障害」のほかに等級がある場合には、その等級により認定することとされています(たとえば、脳損傷による視野障害、脊髄損傷による胸腹部臓器の障害など)。