後遺障害
センター南 横浜都筑法律事務所

後遺障害

上肢(腕・肩)の後遺障害

上肢の切断・用廃は最重度で1級

機能障害・偽関節・長管骨変形も規定


交通事故による上肢の切断と用廃について、自賠法施行令の別表第2は、最重度で1級に規定しています。

このほか上肢の切断について5級まで、用廃を含め関節の機能障害について12級までの規定があります。

また、上肢の偽関節を7~8級、長管骨変形を12級として規定しています。

当事務所へのご依頼では、上肢では肩・手首の骨折や腱板損傷(腱板断裂)などの受傷例が多くみられます。

上肢の切断(欠損障害)用廃・機能障害偽関節・長管骨変形について、後遺障害等級と認定基準をご案内します。


手指は別ページになります)

切断(欠損障害)

上肢の切断(欠損障害)について、自賠法施行令の別表第2は、失ったのが両上肢か1上肢か、及び、ひじ関節以上か手関節以上かで分類しています。

後遺障害等級と認定基準は以下の通りです。

両上肢を
ひじ関節以上で失った
1級3号
両上肢を
手関節以上で失った
2級3号
1上肢を
ひじ関節以上で失った
4級4号
1上肢を
⼿関節以上で失った
5級4号

切断と離断


「切断」のほか、「離断」という用語が以下で出てきます。

外形上の「切断」は、人体の構造でみると、骨の途中で切り離されることを「切断」、関節で切り離されることを「離断」といい、以下の各用語はそれらの意味になります。


1級・4級「ひじ関節以上で失った」


「ひじ関節以上で失った」とは、次のいずれかに該当する場合とされています。

a 肩関節において、肩甲骨と上腕骨とを離断。

b 肩関節とひじ関節との間において、上肢を切断。

c ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断。


2級・5級「手関節以上で失った」


「手関節以上で失った」とは、次のいずれかに該当する場合とされています。

a ひじ関節と手関節の間において、上肢を切断。

b 手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断。

用廃・機能障害

肩・ひじ・手首の各関節は、上肢の3大関節と呼ばれます。

自賠法施行令の別表第2は、これら関節に残った障害の箇所や程度で分類して、用廃や機能障害を規定しています。

肩・ひじ・手首の用廃・機能障害の後遺障害等級と認定基準は以下の通りです。

両上肢の用を全廃 1級4号
1上肢の用を全廃 5級6号
1上肢の3大関節中の
2関節の用を廃した
6級6号
1上肢の3大関節中の
1関節の用を廃した
8級6号
1上肢の3大関節中の
1関節の機能に
著しい障害を残す
10級10号
1上肢の3大関節中の
1関節の機能に
障害を残す
12級6号


1級・5級「上肢の用を全廃」


「上肢の用を全廃」とは、3大関節(肩・ひじ・手首の各関節)のすべてが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものをいうとされています。

上腕神経叢の完全麻痺もこれに含まれます。


6級・8級「関節の用を廃した」


「関節の用を廃した」とは、次のいずれかに該当する場合とされています。

a 関節が強直した。
 ただし、肩関節にあっては、肩甲上腕関節が癒合し骨性強直していることがX線写真により確認できるものを含む。

b 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にある。
 「これに近い状態」とは、他動では可動するものの、自動運動では関節の可動域が健側の可動域角度の10%程度以下となったものをいう。

c 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されている。


10級「関節の機能に著しい障害を残す」


「関節の機能に著しい障害を残す」とは、次のいずれかに該当する場合とされています。

a 関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されている。

b 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、上記「関節の用を廃した」(6級・8級)のc以外。


12級「関節の機能に障害を残す」


「関節の機能に障害を残す」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されている場合とされています。

事例紹介(肩の骨折)


【事故態様】被害者がバイクに乗っていたところへ、乗用車が衝突。

【受傷内容】右上腕骨近位端骨折

【後遺障害認定】上記骨折に伴う右肩関節の機能障害について、可動域が健側(左肩関節)の2分の1以下に制限されていることから、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として後遺障害10級10号に該当すると認定されました。

事例紹介(腱板断裂)


【事故態様】被害者が自転車に乗っていたところへ、トラックが衝突。

【受傷内容】左肩腱板断裂

【後遺障害認定】上記腱板断裂後の左肩関節の機能障害について、可動域が健側(右肩関節)の2分の1以下に制限されていることから、「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」として後遺障害10級10号に該当すると認定されました。

偽関節・長管骨変形

「偽関節」とは、骨折した箇所の骨の再生が途中で止まってしまい、もとどおりにくっつかなくなった癒合不全の後遺障害です。

「長管骨変形」の長管骨とは、四肢を形づくる管状の骨であり、上肢の長管骨は上腕骨・橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)です。

上肢の偽関節・長管骨変形の後遺障害等級と認定基準は以下の通りです(偽関節と長管骨変形は「変形障害」と総称されます)。

1上肢に偽関節を残し、
著しい運動障害を残す
7級9号
1上肢に偽関節を残す 8級8号
長管骨に変形を残す 12級8号


7級「偽関節を残し、著しい運動障害を残す」


「偽関節を残し、著しい運動障害を残す」とは、次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とする場合とされています。

a 上腕骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残す。

b 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残す。


8級「偽関節を残す」


「偽関節を残す」とは、次のいずれかに該当する場合とされています(常に硬性補装具を必要とするものではない場合ということになります)。

a 上腕骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので、上記7級以外。

b 橈骨及び尺骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので、上記7級以外。

c 橈骨又は尺骨のいずれか一方の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とする。


12級「長管骨に変形を残す」


「長管骨に変形を残す」とは、次のいずれかに該当する場合とされています。これらの変形が同一の長管骨に複数存する場合も含まれます。

a 次のいずれかに該当する場合であって、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正癒合)以上。

(a) 上腕骨に変形を残す。

(b) 橈骨及び尺骨の両方に変形を残す。
 ただし、橈骨又は尺骨のいずれか一方のみの変形であっても、その程度が著しいものはこれに該当する。

b 上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残す。

c 橈骨又は尺骨の骨幹部又は骨幹端部に癒合不全を残すもので、硬性補装具を必要としない。

d 上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損

e 上腕骨(骨端部を除く)の直径が3分の2以下に、又は橈骨もしくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が2分の1以下に減少。

f 上腕骨が50度以上外旋又は内旋変形癒合
 この場合、50度以上回旋変形癒合していることは、次のいずれにも該当することを確認することによって判定。

(a) 外旋変形癒合にあっては肩関節の内旋が50度を超えて可動できないこと、また、内旋変形癒合にあっては肩関節の外旋が10度を超えて可動できないこと。

(b) X線写真等により、上腕骨骨幹部の骨折部に回旋変形癒合が明らかに認められること。

なお、長管骨の骨折部が良方向に短縮なく癒着している場合は、たとえ、その部位に肥厚が生じていても長管骨の変形としては取り扱わない。



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このページの著者

 弁護士 滝井聡
  神奈川県弁護士会所属
    (登録番号32182)